簡単に分かる声のしくみ

目次

 

発声のしくみ

「声」という音が出る仕組みは、ギターやヴァイオリン、ハープなどといった弦楽器とほぼ同じです。

声帯は下の画像のように、呼吸をする時は開いていて、声を出す時にはピッタリと閉じます。

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この「声帯」という弦に、肺から送り込まれた空気(息)がぶつかることで、声帯が振動して音が出ます。
その音が喉や口の中、鼻腔、頭など、身体の様々な空間に響いて共鳴することで「声」になるのです。


音程が変わるしくみ

先ほど説明したように、声の仕組みは弦楽器と同様です。
ギターでは、細くてピンッと張った弦を弾くと高い音が出ますよね。逆に、太く弛んだ弦を弾くと低い音が出ます。

これはギターがなくても輪ゴムなどで実際に試すことができます。細いゴムを軽く張った状態とピンッと張った状態、太いゴムを軽く張った状態とピンッと張った状態、それぞれ弾いた時の音色が異なると思います。

 

声帯も同じです。筋肉の働きによって、声帯を伸ばしたり縮めたり、厚くしたり薄くしたりすることによって声の音程が変化しています。私達はこれを無意識にやっているのです。

 

音質が変わるしくみ

同じ高さの声でも、太くて重みのある感じの声だったり、細くて軽い感じの声だったりしますよね。
これは主に声帯の厚みと、それによる声帯の振動数によって変化します。その仕組みを「地声」と「裏声」の違いから見ていきましょう。

 

地声のしくみ

声帯は表面から粘膜組織、靭帯、筋肉が層のような構造になっています。

この声帯そのものと言ってもいい筋肉を「甲状披裂筋(Thyro-arytenoid muscle)」と言います。「TA」と略されることが多いです。


腕に力を入れると筋肉がギュッと縮まって力こぶができますよね?それと同じで、この筋肉が収縮することで声帯が短くてぶ厚い状態になり、振動回数が少なくなって、低い音つまり地声が発声されます。この筋肉の収縮を強めていくことで、声帯はより短く厚く固くなり、それに応じて出る声の音程が下がったり音色が太くなります。

 

 地声を発声している時、声帯はこのように振動しています。声帯が厚い状態で全体が波打ってぶつかり合っています。

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また、低い音というのは広い空間に響くという性質があります。そのため、声帯で作られた低い音は胸など比較的広い空間で共鳴します。低い声を出している時に胸に手を当ててみると、声が胸に響いているのがよく分かると思います。太鼓のドン!ドン!という低音が胸に響くのも同じ原理です。
歌における地声が「チェストボイス」と呼ばれるのはそのためです。


裏声(ファルセット)のしくみ

声帯を縮める筋肉と同様に、声帯を引っ張って引き延ばす筋肉も存在しています。この筋肉は「輪状甲状筋(Cricothyroid muscle)といい、「CT」と略されます。この筋肉によって声帯が引き伸ばされることで声帯は長く薄くなり、振動数が多くなることで、高い声が発声されます。

 

この時、声帯の表面の粘膜組織のみが振動して音が鳴る状態が「裏声」です。裏声は声帯の表面のみが細かく振動しているため、優しく細い音色になります。

 

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低い音とは反対に、高い音というのは狭い空間に響く性質があります。そのため、高い声を出すと鼻腔や頭など比較的狭い空間に響きます。黒板を引っ掻く音など、キンキンした音は耳や頭が痛くなったりしますよね。
中音域の発声方法で「鼻腔共鳴」という言葉が使われたり、高音の発声が「ヘッドボイス」と呼ばれるのはそのためです。

(ヘッドボイスとは一般的に言う裏声とは全くの別物です。裏声とはあくまでファルセットを指します。これについては後々の記事で触れます。)

 


声の仕組みについての大まかな説明は以上になります。

もちろん、発声にはこの2つの筋肉以外にも様々な筋肉が密接に関わっていますが、とりあえずこれだけでも知っていれば、巷に溢れるボイトレ方法についてもイメージが掴みやすく、またそれが理にかなった正しい方法かどうかを見極める助けになるかと思います。